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シェル社からの返事へのアムネスティの回答

シェル:ナイジャーデルタの状況は複雑である。アムネスティの主張はそれを適切に反映しておらず、現実と根本の原因を無視している。

アムネスティは、ナイジャーデルタに関する報告書の中で、同地域における複雑な紛争状況のさまざまな原因に焦点を当てています。例えば、 半世紀にわたって続いている汚染と環境破壊がデルタ地域の人びとに及ぼしている影響、被害に対する実効的な説明責任と賠償がないこと、石油産業が及ぼす影 響について透明性と情報提供の不十分であることなどです。

シェルは、ナイジャーデルタの状況が複雑であると言います。そして、原油漏れの責任は地域社会や民兵にあり、汚染を除去するために現地に 入ることができないのも彼らのせいだと非難しています。しかしそれは、全体像の一部でしかありません。汚染の防止や除去を怠ったり、原油漏れ調査や賠償の 支払に透明性がないなど、シェルのお粗末な対応が問題の基本的な部分を占めています。

例えば、オゴニランドのキラ・タイで2007年5月12日に原油漏れが発生しました。シェルは腐食が原油漏れの原因だと認めたものの、適 切に除去せず、賠償も支払わなかったと、地域住民はアムネスティに語っています。アムネスティはその後、5人のシェル代表者、取り締まり当局および地域住 民が署名した調査報告書を入手しました。その内容は、住民の話を裏付けるものでした。しかし、アムネスティがこのケースについてシェルに問いただしたとこ ろ、公式の調査報告書に反して、それは妨害行為によるものだと回答しました。その後アムネスティは、シェルが調査結果を変えた理由を裏付ける証拠を求めま した。アムネスティはその情報をシェルから受け取っていません。

アムネスティがキラ・タイを訪問したとき、住民は、シェルが原油漏れの原因を変えたことをまったく知らず、賠償の支払いをずっと待ち続けていました。シェルは、こうした行いこそが住民の不信と怒りを募らせ、紛争を悪化させているという事実と向き合わなければなりません。

複雑さと武装ギャングによる妨害行為を指摘することによって、シェルは、自らのお粗末な対応と失態から焦点をずらそうとしているに過ぎません。

シェル:原油漏れの85パーセントが襲撃と妨害行為によるものである。

腐食と設備不良に対して、妨害行為を原因とする原油漏れの割合は、客観的に結論付けることができません。ナイジャーデルタにおける原油漏 れの原因について独立した調査や検証がこれまでにまったく行なわれていなかったからです。多くの場合、シェルは、たとえ監督行政機関がいたとしても、原油 漏れの原因の確定に大きな影響力を持っています。原油漏れの原因が腐食や機械不良であるとわかった場合、シェルは賠償責任を負うからです。このことが、深 刻な利害対立を引き起こしています。

例えば、2002年のデルタ州バタンの大規模な原油漏れ事故では、シェルは州知事に手紙を書き、事故は妨害行為が原因だと主張しました。 手紙は、事故調査が終了する2日前に書かれていました。さらに、調査のビデオ記録、さらには地元のNGOによるフォローアップも、因果関係についてシェル の主張と一致していません。独立した調査は、バタンの原油漏れ事故の原因は設備不良であるとしています。(ビデオはアムネスティ国際事務局のウェブサイト でご覧になれます)

1989?1994年の間に起きたシェルによる原油漏れ事故のほとんどは、シェル自身も認めているように、腐食あるいは操業時の事故が原 因でした。漏れた原油のうち28パーセントだけが妨害行為によるものでした。2007年、シェルはその量の見積もりを70パーセントに増やしました。アム ネスティの報告書に呼応して、シェルは今やその数字を(原油漏れ総量の)85パーセントに引き上げています。アムネスティは、妨害行為や破壊行為は深刻な 問題だと理解していますが、それらのデータを裏付ける信用性の高い証拠を見つけていません。

妨害行為は、原油漏れという石油産業による公害の一形態であり、一つの課題にすぎません。過去半世紀にわたって、石油業界は、廃棄物の排出、小川や河川の浚渫、掘削廃棄物の廃棄、地震、水系を堰き止める道路建設などさまざまなかたちで公害を引き起こしてきたのです。

シェル:社会環境影響評価について、適切に情報を公開している。

シェルは、環境社会影響評価はこれまで公開してきており、現在も公開していると主張しています。しかし、アムネスティが報告書作成のため に再三要請したにも関わらず、同社はいかなる環境影響評価も提供しませんでした。名目上は、環境社会影響評価はナイジャーデルタの政府庁舎で見ることがで きることになっています。しかしそれは、影響を受ける地域住民に対して報告書が公開されることと同じではありません。アムネスティは地元の政府庁舎で環境 影響評価を入手しようとしましたが、叶いませんでした。庁舎の職員は、報告書のコピーを渡すことを恐れていましたが、その理由については何も語りませんで した。

2009年6月、企業責任のためのアフリカ・センター、環境・人権・開発のためのセンター、ケベトカチェ女性開発・資源センター、オゴニ人民生存運動など複数のナイジャーデルタにおける団体とともに、アムネスティは、シェル員に以下の情報公開を要請しました。

  • ナイジャーデルタにおけるすべてのシェルの環境影響評価
  • シェルのナイジャーデルタでの操業が同地域の環境と住民に及ぼす影響に関して、シェルが実施したすべての研究や調査の一覧。特に漁業や農業、生業、健康に及ぼす影響に関する情報、また原油漏れ、ガス爆発、あるいは廃棄物の処理に関するすべての研究
  • それらの報告書や研究、その他のデータのコピー、あるいは、それらをシェルが公開しない理由
  • ナイジャーデルタ環境調査

シェルは、それらの情報をいっさい提供しませんでした。

環境影響評価が公開されているなら、なぜシェルが(電子媒体であれ、紙媒体であれ)そのコピーを関係当事者に提供しないのか、アムネスティは理解に苦しみます。

シェル:アムネスティは、シェルがナイジャーデルタの地域経済や開発に貢献したことを十分理解していない。

アムネスティは、シェルが雇用などの面でナイジェリアに一定の貢献をしたことを認めています。しかし、ある分野での貢献が、他の分野にお ける人権侵害に対する責任を免除することにはなりません。人権侵害はなにかで相殺されるものではありません。教育、健康、技能訓練などの活動やインフラ整 備のためにシェルが払った資金が、ナイジャーデルタでシェルが引き起こした環境被害を回復するものではないし、今後被害を引き起こす可能性のある問題の対 策にもなり得ないのです。

シェルの本業の中に人権への尊重を統合することを、アムネスティは重要視しています。人権および多国籍企業ならびにその他の企業に関する 国連事務総長の特別代表は、2009年に人権理事会に提出した報告書の中で、人権を尊重するうえでの企業責任の中心的要素は、他者の権利の侵害を避けるこ とを遵守することだと説明しています。

アムネスティがシェルに求めていることは、国連特別代表の枠組みに沿ったものです。それは、すべての関係する情報の開示と、人権に対する影響評価を企業活動の中に組み入れることなのです。

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