2025年は国際法、国際秩序がさまざまな形で脅かされた年となりました。ロシアによるウクライナ侵略は続き、武力による国境変更の試みが止まりませんでした。パレスチナ・ガザ地区の人びとに対するイスラエルの攻撃や厳しい制限で大勢の命が失われる中、民間人保護の国際人道法が軽んじられ、ジェノサイド、アパルトヘイト、戦争犯罪が野放しにされています。重大な人権侵害を裁く国際刑事裁判所に政治的圧力がかけられ、逮捕状が出ても加盟国が執行しない事態も起きています。また、権威主義の脅威が増大し、法が権力者に都合よく利用され、民主主義の土台である法の支配も世界的に揺らいでいます。米国は暴力的な移民取り締まり政策や公海での船舶攻撃による違法殺害により命を奪い、他国での武力による現状変更を試み、世界中の人権を危機にさらしています。
アムネスティは、こうした世界的な人権の危機に対し、調査活動、提言活動、啓発活動を通じて、粘り強く闘い続けています。アムネスティ日本も、イスラエルのジェノサイドに抗議するデモや、気候正義をテーマにしたイベント、抗議活動で拘束された人のための署名活動、問題を訴える映画上映などに取り組みました。
国際的に行ったキャンペーン
国際キャンペーン「Protect the Protest」

米国移民関税執行局(ICE)の前で学生活動家マフムード・ハリルさんの釈放を求めるデモ参加者たち ©2025 Probal Rashid
海外では、政府の政策に抗議する集会に参加したりSNSで非難したりする人たちが、不当に逮捕され暴力を受けるなどの人権侵害に遭っています。声を上げる空間がこれ以上萎縮しないよう、アムネスティ日本は世界中のメンバーと共に、昨年に引き続き、人権のために行動する人たちを守るオンライン署名を行いました。
3月、米国移民局によって恣意的に拘束されていたコロンビア大学に通う大学院生でパレスチナ人活動家のマフムード・ハリールさんが、日本を含む世界中から集まった署名や手紙・ハガキ、市民社会からの働きかけなどにより、6月に釈放されました。
12月の人権デーイベントではこのテーマを大きく掲げ、東京と大阪でイベントを開催。ユースメンバーが中心となり、人権のために抗議することや声を上げ続けることの大切さを訴えました。
<実施したオンライン署名>
▷ 米国:イスラエルへの抗議デモに参加して強制送還の危機にある学生を救って!
▷ アルゼンチン:平和的に声を上げただけで失明したホエルさんに救済を!
緊急対応
パレスチナ危機 ガザのジェノサイドに終止符を!

イスラエルによるガザ地区でのジェノサイドは今年も続き、停戦合意がなされた後も攻撃や占領地での土地の奪取・入植地の拡大が続いています。アムネスティは世界中で、ガザで生きる子どもたちの名前を、キャンペーン参加者一人ひとりに振り分ける国際キャンペーン「Let Children Live」を行い、日本でも展開しました。
9月にはアムネスティ日本主催でデモを行い、300人以上が「子どもを殺すな、誰も殺すな」などと書かれたプラカードを掲げ、イスラエルに抗議の声をあげました。
また、イスラエルの犯罪を支える企業15社を特定し、各国政府や企業がとるべき行動をまとめたアムネスティの報告書を提言書とともに外務省や経済産業省等に提出しました。
11月には、イスラエルの軍需企業から攻撃型ドローンの輸入を検討している防衛省との交渉に参加し、日本政府にはイスラエルの国際犯罪を止めるために影響力を行使する義務があることを強調、ジェノサイドやアパルトヘイトに加担する軍需企業との取引の即時停止を求めました。
アジア地域の人権


香港国家安全維持法の施行から5年。多数の市民や活動家、ジャーナリストが逮捕・起訴され、有罪判決を受けるなど、香港では急速に人権が後退しています。5月、香港民主活動家を講師に招き、香港の歴史や民主化運動の流れ、現在の香港の状況を解説するオンラインセミナーを実施しました。質疑応答では参加者から多くの質問が投げかけられ、関心の高さがうかがえました。また12月には、映画『香港、裏切られた約束』の上映会(解説付き)を開催し、私たちの『人権』と『自由』をどのように守っていくべきなのかを考える機会にするとともに、日本からも香港の現状を注視し、香港の人びとへ思いを寄せることの大切さを再確認しました。
国内法制度の取り組み
死刑廃止
4月、2024年の死刑判決と執行状況をまとめた死刑統計を発表。5月にはチームを中心に、在任中、死刑制度の廃止を実現させた元モンゴル大統領の講演会を他団体と共に実施し、日本と世界における死刑制度の課題や死刑廃止への具体的な道のりについてお話しいただきました。6月27日、2年11カ月ぶりに死刑が執行された際には、抗議声明を発出し、直ちに死刑制度を停止するよう他団体と共に記者会見で訴えました。10月の世界死刑廃止デーには「なぜ日本は死刑を手放せないのか」をテーマに、「響かせあおう死刑廃止の声2025」を他団体と共同で開催しました。その他、東京と大阪のチームが中心となって死刑廃止入門セミナーを定期開催し、日本の死刑制度の問題を広く発信しました。
気候変動と人権


気候変動は世界各地で人びとの命を奪い、安心して生きる権利を脅かしています。また、化石燃料からクリーンエネルギーへ移行する過程においても、政府や企業による人権侵害が起きています。アムネスティは昨年に引き続き、環境のために活動する人びとの救済を求める要請活動に取り組みました。また、環境NGOなどと連携するネットワークやイベントを通じて、環境運動の中で人権を守ることの重要性や、気候変動の影響が不平等に及び、その原因にほとんど責任のない人びとほど深刻な被害を受けている現状を踏まえ、公平性を求める「気候正義」への関心を高める活動を行いました。さらに、海外支部と協力し、日本政府への提言(G20に関する提言)や、人権上の懸念がある政策に関わる国の大使館に要請書を提出(エクアドルのガスフレア、ブラジルの新政策などに関して)するなど、アドボカシー活動にも取り組みました。
ビジネスと人権
アムネスティは2025年、ファッション業界における労働者の権利侵害、米国・パキスタンでの市民監視、サウジアラビアやカナダにおける移民労働者への人権侵害など、企業活動がもたらすさまざまな人権課題について報告書を発表しました。日本では、政府の「ビジネスと人権」に関する行動計画(NAP)案に意見を提出したほか、コンゴのコバルト鉱山における人権侵害をテーマに、アムネスティの専門家を招いたウェビナーを開催するなど、チームとグループが中心となって取り組みました。
また、カナダの先住民の土地で液化天然ガス(LNG)事業を進める三菱商事と、それに出資する国際協力銀行(JBIC)に対し、人権侵害への懸念をまとめたレポートを添えた要請書簡を送付し、企業と公的金融機関の責任を問いかけました。
難民と移民
5月、出入国在留管理庁は、外国人を治安上の脅威とみなし、2030年末までに不法滞在者を半減させる「ゼロプラン」を発表しました。保護されるべき人まで排除の対象としかねないこの方針は、差別を助長するおそれがあります。アムネスティ日本は抗議のため、公開書簡「『入管ゼロプラン』に反対し、外国人を排除しない、国際人権法に基づく共生のための制度改革を求める」を発表しました。
また、2021年3月に必要な医療へのアクセスを拒まれ、名古屋入管の収容施設内で命を落としたスリランカ出身のウィシュマ・サンダマリさんの最期を記録したビデオ映像の全面開示が拒否された際には、これに抗議するため、公開書簡「ウィシュマさんの動画開示請求に対し国際人権法の遵守を強く求める」を9月に発表。10月には、全国研修会「ウイシュマさんはなぜ十分な治療を受けられなかったか? 〜名古屋入管事件から考える〜」を愛知で開催しました。
12月には、茨城県牛久市の東日本入国管理センターに通算12年半収容され、単独での歩行も困難な深刻な健康状態にあったパキスタン・カシミール出身のムスタファ・カリルさんに対し、強制送還の通知が一方的に出されました。アムネスティはこれに抗議し、「生命の危機にあるムスタファ・カリルさんの強制送還を直ちに停止せよ」とする公開書簡を発表しました。
#選挙は人権で考える
6月、現職の国会議員に向けて人権意識を問うアンケートを国会議員人権意識調査チームが中心に行いました。また、7月の参議院議員選挙の際には立候補者に対し、LGBTIや難民問題などへの意識を問うアンケートを実施し、回答を特設Webサイトで公開しました。排外主義や権威主義の高まりが憂慮される中、人権が守られる社会を望む市民の声を国政の場に届けることを広く呼びかけ、結果公表と同時に行った記者会見には多数の報道関係者も訪れました。
人権教育
2025年も複数の団体や教育・人権機関から講演依頼がありました。また、前年から取り組んでいた世界人権宣言を活用した子ども向け人権ワークショッププログラムが完成し、ファシリテーターを務めるボランティアに対し、研修や勉強会を開催するともに、実際のファシリテーションのトライアルの場を設けるなど、育成を進めました。
2025年に実施したその他の主なイベントほか
- 2月8日(土)開催@大阪 セミナー「ジェノサイドを止めるために~パレスチナ・ガザにおける人道的危機~」
- 6月7,8日(土日)@東京「Tokyo Pride 2025」に参加
- 11月1日(日)@大阪 「創価学会:平和の文化講演会」でアムネスティの紹介とジェンダーをテーマに講演
- 2025年度<前半>ユースの活動報告
- 2025年度<後半>ユースの活動報告
- 「仮放免の子どもたちの絵画作文展」を関西の3つの大学で開催
- 11月17日(月)@兵庫 駒井知会弁護士の講演会「仮放免の子どもたち」を開催
イベント
ライティングマラソン2025

暴力をもちいていないのに、自らの信念や人種、宗教、肌の色などを理由に囚われの身となった人たちの自由を求め、世界中の仲間とともに手紙を書く、アムネスティ恒例のイベント「ライティングマラソン」。2025年も64の国と地域で、講演会、コンサート、マラソンイベント、学校での人権教育としてなど、さまざまな取り組みが行われ、世界で3,962,563通の手紙やハガキ、署名が関連当局や人権侵害に遭っている人たちに届けられました。日本国内でも、20を超えるグループとチームが全国各地でイベントを行いました。



